【受動態とは?】受け身の使い方と目的を簡単解説
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受動態の使い方と目的を簡単解説
こんにちは!大阪市福島区の英語塾『福島英語塾』講師の犬伏です。
受動態(受け身)のルール自体はすごく単純なのですが、
他の文法と組み合わさることで難しく感じてしまうかもしれません。
それは受動態がわかっていないわけではなく、
いろんなパターンを目にしていないだけです。
このページでは受動態の基本的なルールと
受動態を使う目的を例文を通して解説しています。
それでは早速、受動態とは一体何かを解説します。
受動態とは「〜される」といったように何かしらの行為を受ける側に焦点を当てた表現です。
具体例で考えてみましょう。
りんごは世界中で食べられています。
食べる(eat)という行為を行う側は人間ですが、「食べる」という行為を受ける側(=食べられる側)はりんごですね。
このりんごを主語において表現する文法のことを受動態と言います。
簡単に考えるなら要するに「〜される」という表現というわけです。
能動態とは?
受動態に関連する用語に「能動態」という言葉があります。
受動態の勉強でよく耳にする用語なので簡単に解説します。
「能動態」というのは「受動態」の反対の用語です。
「受動態」が行為を受ける側の表現であるのに対して、「能動態」は行為を行う側を主語において表現します。
よく目にする文は基本、この「能動態」です。
「〜は・・・する。」という展開が能動態で、『〜は・・・される。」というのが受動態というわけです。
先ほどのりんごの例文で考えるなら、能動態の文とは以下のような文です。
受動態の作り方
それでは受動態の作り方を解説します。
受動態のルールは簡単です!
このルールを守っていただくのみです。
え、めちゃめちゃ簡単やん!そう思っていただけたでしょうか?
ルール自体は簡単なんですよ。
でもこのページに来ていただいた方は、それでもよくわからないところがあるからこそ、受動態を調べに来たのではないでしょうか?
ルールだけわかっても、実際のケースでは難しいものもあったりしますよね?
それでは学習者を悩ます難しい部分を取り上げて、解説をしていきたいと思います。
受動態が難しい5つの理由
難しい理由その1:時制の組み合わせがちょっとややこしい
まず受動態が難しい理由その1は時制との組み合わせがちょっとややこしいことです。
基本的にbe動詞の部分を現在形・過去形・未来表現に変えてあげたらいいのですが、進行形や完了形や助動詞との組み合わせはどうなるのでしょう?
以下に全てのパターンを載せておくので一つ一つ形を確認してください。
現在形(私が主語の時) | I am surprised. |
現在形(主語が単数の時) | He is surprised. |
現在形(主語が複数の時) | They are surprised. |
過去形(主語が単数の時) | I was surprised. |
過去形(主語が複数の時) | They were surprised. |
未来表現(will) | We will be surprised. |
未来表現(be going to) | We are going to be surprised. |
現在進行形(主語が単数の時) | The building is being constructed. |
現在進行形(主語が複数の時) | The buildings are being constructed. |
過去進行形(主語が単数の時) | The building was being constructed. |
過去進行形(主語が複数の時) | The buildings were being constructed. |
未来進行形(will) | The building will be being constructed. |
未来進行形(be going to) | Those dishes are going to be being washed. |
現在完了形 | This song has been sung. |
過去完了形 | The machine had been used until then. |
未来完了形 | The phone will have been used for 2 years. |
助動詞 | The plan can be put off. |
不定詞 | I want to be admitted to the university. |
不定詞(時制のズレがある時) | The festival is said to have been enjoyed over a century. |
動名詞 | I hate being ignored. |
動名詞(時制のズレがある時) | I appreciate having been raised by my parents. |
分詞 | Having been raised by bilingual parents, I can speak both English and Japanese quite well. |
いろんなパターンを取り上げましたが、この全てに目を通してみると、全て「be + 過去分詞形」が徹底して使われていますね。
だから結論、ルールとしては「be + 過去分詞形」と教えているわけです。
ちなみに個人的には結論だけを教えて効率の良い勉強をすることは語学学習においては非効率だと思っています。
結論だけを教える教育にはデータがありません。
それに対して、よくわからないなりにもたくさん例文に目を通したり、英文をたくさん読んでいくとデータが貯まっていき、共通点に気づくことができます。
これが文法です。
Comprehensible Inputと呼ばれる「理解可能なインプット」を増やすことで英語力を高める方法があります。
膨大なインプットを通して、文法や表現を学ぶことは可能です。文法が無駄な勉強ということではありませんが、同時にたくさんインプットをすることにも非常に大切です。
難しい理由その2:いつもbyを使ったらいいわけではない
受動態を学ぶ人を悩ませる受動態が難しい理由その2はいつbyを使っていいのか?という疑問です。
結論から言うと常にbyを使ったらいいわけではありません。
「by」という前置詞は行為の当事者を表す時に使われる単語です。
以下のような場合です。
この番組は何百万人もの人に見られてきました。
テレビ番組を見たのは「何百万人もの人」です。
見るという行為を行った行為の当事者というわけです。
こうなふうに動詞の動作を行った存在に対しては「by + 名詞』という形で「〜によって」と使うことができます。
それに対してこの例はいかがでしょう?
その山は雪で覆われている。
これは「with」という前置詞が使われていますね。雪が意志を持って山を覆うわけではないので、「cover」という行為を積極的に行っているとは思えません。
そういう時には「by」という前置詞は使えないんですね。
理屈は理解できたと思いますが、これも実際のケースを見ていないとなかなか対応できないものです。
なので、ここでもよく使われる受動態の表現を列挙しておきたいと思います。
be interested in | 〜に興味がある |
be pleased with | 〜に喜ぶ |
be filled with | 〜でいっぱいである |
be known to | 〜に知られている |
be known for | 〜で知られている |
be known as | 〜として知られている |
be made of | (材料)から作られている |
be made from | (原料)から作られている |
be made into | 〜へと加工する |
be covered with | ~で覆われている |
be killed in | 〜で亡くなる |
be born in | 〜で生まれる |
be surprised at | ~に驚く |
be admitted to | 〜に入会する |
be caught in | (雨など)にあう |
be satisfied with | 〜に満足している |
be injured in | 〜で怪我をする |
be invited to | 〜に招待する |
be disappointed at | 〜にがっかりする |
be engaged in | 〜に従事する |
be absorbed in | 〜に夢中になる |
理論だけではなくて、実際のケースをみていないとわからないことも実際のところ、たくさんあります。
なので、上記のように例をたくさんあげましたが、もっともっとたくさん実際のケースを見ておきたいのであれば、多読多聴をすることをお勧めします!
難しい理由その3:そもそもbyは必要なのか?
受動態が難しい理由その3はまた「by」に関わる疑問です。「by」っているの?いらないの?という疑問ですね。
中学・高校で勉強した時にはとりあえず「by」をつけるように教わりましたか?
でも「by」をつけるかつけないかはその都度判断していかないといけないことで、理論だけではどうにもならず、練習が必要です。
ただ判断基準はあるので、それを2つ解説しておきます。
まず1つ目ですが、そもそもなぜ受動態という表現が必要かを考えると「by」が必要か必要ないかがわかります。
例えば、以下の例文を見てください。
テーブルから離れている隙にかばんを盗まれた。
ここで、「かばんが盗まれた」という受動態の文が使われています。テーブルから離れている隙を狙われたことを考えると盗んだ犯人が誰かは特定できていないでしょう。
そう考えると誰が盗んだのかというのはわかりませんよね。
だから能動態で「〜がかばんを盗んだ。」と言いたくても、主語を立てることができません。
例えば、この例のように行為の当事者がわからないからこそ受身にする、ということを考えれば、「by + 人」という形がこのケースでは不必要なことが理解していただけると思います。
この解説だけだと、じゃあ「by」っていらないじゃん、って理解してしまいそうです。
なので、今度は「by」が必要なケースを解説します。
そもそも英語は古い情報を文頭辺りに、新しい情報を文末辺りに持ってくる傾向があります。
「by」というのは文末に置く表現なので、話の流れ的に新情報として出す必要があれば、「by」以下の表現は使われます。
以下のような場合ですね。
その男性は自身の孫に殺されていたと報道されました。
これは少し解説が必要です。
まず流れとして、ある殺人事件があったとしましょう。
老人が誰かによって殺されてしまったけれども、誰が殺害したのはわかっていませんでした。
それから数日語、被害者男性の孫が犯行に及んだことが明るみに出た場合、知られていなかった情報は「誰が犯人か?」ということですね。
それが新情報として出たわけです。新情報は文の後ろの方で出すということでしたので、こういう状況においては「by his own grandson」という表現を使っても構いません。
このケースはまた焦点が被害者男性にあるという意味で受動態を取っているという解釈もあるでしょう。
いずれにしても「His own grandson had murdered the man.」では伝わらないニュアンスが受動態の文にはあるということです。
「by」をつけるかつけないかというのは状況別に都度考えて判断することが必要ですので、受動態の文に出会うたびに練習しましょう。
難しい理由その4:群動詞の時は注意
受動態が難しい理由その4は群動詞を受動態にする時の前置詞や副詞を忘れてしまうことです。
よくわからないと思うので、具体例で考えましょう。
You need to hand in your assignment here.(能動態)
「hand in」というのが2語以上で成り立つ群動詞と呼ばれるものですが、「hand in」のかたまりで「提出する」という意味なので、受動態を作る時もまとまりのまま「be handed in」としなければいけません。
ただこの最後の前置詞を落としてしまうことがよくあるミスです。
これは講師としての感覚ですが、「動詞+副詞+前置詞」のかたまりで使う群動詞で最後の前置詞を落としてしまう方が多いように感じます。
例えば以下のような例です。
My cat needs to be taken care of.(受動態)
この「taken care of」の「of」がよく抜けます。でも先ほども伝えましたが、「take care of」のかたまりで郡動詞なので、このまとまりのまま受動態にしてください。
これもまた具体的な例を見ておけば、対応しやすくなると思います。なので5個ほど例を載せておきます。
能動態 | 受動態 |
---|---|
We look after a baby. | A baby is looked after. |
I should cut down on expenses. | Expenses should be cut down on. |
We put off the meeting. | The meeting was put off. |
A robber broke into our house. | Our house was broken into. |
I’ll fill in the form. | The form will be filled in. |
難しい理由その5:そもそも受動態ってなんで必要
受動態が難しい理由その5はそもそも受動態という文法が必要かどうかを理解していないことです。
ほとんどの人にとって、受動態を勉強する理由は、それが文法項目だったから、ということではないでしょうか?
でも無駄な文法なんて一つもありません。
ちゃんと理由があって存在しています。
もちろん受動態にも存在意義があります。
それを5個にまとめてみましたので、1つ1つ解説していきます。
受動態を使う目的 ①:行為の当事者が誰なのかわからない
テーブルから離れている隙にかばんを盗まれた。
この文は誰が鞄を盗んだのかわかりませんよね。
そういう時には行為の当事者を主語におけないので、致し方なく受動態を使おうということになります。
ちゃんと受動態じゃなければいけない理由があるんですね。
受動態を使う目的 ②:行為の当事者に焦点が当たっていない
りんごは世界中で育てられています。
誰が育てているのかには焦点が当たっていません。
りんごに焦点を当てたいわけです。
なのでこれも行為の当事者を主語にする必要がありません。
これも真っ当な理由で受動態を使うべき例です。
受動態を使う目的 ③:人を責めない表現になる
お前が窓割ったんだろ。
怖いですね。
こんなこと言われたら完全んい責められてると思いますよね。
でもこれを受動態にするとこうなりまあす。
窓割れたね。
誰がやったのかをあえて伏せたことで責める感じがなくなりましたね。
子供が責任逃れしたくて、こんな表現を使うという解釈もあり得ますね。
いずれにしても、この場合は行為の当事者を主語に立てようと思えば立てられるけれども、あえてそれを伏せて受動態にするというケースでした。
受動態を使う目的 ④:客観的になる
私たちはメキシコ料理が好きです。
これだと私たちが好きなだけであって、それ以外の人がどう思っているのかはわかりませんよね。
あくまであるグループの主観的な意見だと捉えられるはずです。
でもこれを受動態にすると何が起こるでしょうか?
メキシコ料理は愛されています。
一般的にメキシコ料理が好んで食べられている感じがしませんか?
客観性が増したことで自分たちがどう思っているのかというニュアンスが消えました。
これも能動態で書けなくはないですが、客観性を生むという目的を果たすために受動態があえて選ばれたケースです。
受動態を使う目的 ⑤:行為の当事者を主語にすると長くなる
英語は国際的にコミュニケーションを図りたい何百万もの人によって学ばれています。
この文は能動態で書くことはできます。でもそうすると頭でっかちなバランスの悪い文に仕上がってしまいます。以下、参考にしてください。
主語が長いなぁ、と思ったら突然分が終わってしまった!というような印象を受けます。
文のスタイルを整えるためにも受動態というのは使えるわけです。
受動態を使う目的 ⑥:主語に焦点を当て続ける
主語に焦点を当て続けるというのはどういう意味でしょうか?例文で考えましょう。
川沿いを歩いていたら知らない人が話しかけてきた。
この文自体が悪いわけではないのですが、主語が2つにありますね。
「私」と「知らない人」です。
主語というのはスポットライトが当たっている場所なので、「私」の話をしていたのに突然「知らない人」に話が映ってしまった感がありますね。
これを「私」に焦点を当て続けたいとしたら受動態にすると良いんです。
川沿いを歩いていたら知らない人に話しかけられた。
こんな具合に受動態というのはただ文法項目だから勉強しなくちゃいけない、というものではなくて、ちゃんと存在意義があるんです。
そこを理解しているかしていないかで使い方に差が出てきます。
ぜひ受動態の目的を知った上でいろんな例文に触れ、都度判断してみてください。
まとめ
受動態というのはルールは簡単でした。
「be + 過去分詞形」です。これを守ってください。
でもそれでもちょっとややこしいなと思う要素が5つあると伝えましたね。
それがこちらの5つでした。
難しい理由その1:時制の組み合わせがちょっとややこしい
難しい理由その2:いつもbyを使ったらいいわけではない
難しい理由その3:そもそもbyは必要なのか?
難しい理由その4:群動詞の時は注意
難しい理由その5:そもそも受動態ってなんで必要
全体にわたって言えることですが、理論だけ理解しても英語が使えるわけではありません。
むしろ理論は学習の第1歩です。
ここからいろんな文を見たり聞いたりして、理解を深めていく必要があります。
今回はその学習の第1歩として理論の話をしました。
学習者の方はぜひ毎日少しずついろんな英語に触れて目を肥やしてください。
このページが少しでもお役に立てれば嬉しいです。